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私は小さなワインバーを営んでいて、あのひとは時々みえるお客様。

どういう経緯でかは覚えていないけれど、オフの日に一緒に食事をする約束をした。

お店の予約はあのひとがしてくれて、互いに一本ワインを持ち寄ることになった。 

 

自宅のワインセラーを覗きながら、どのワインにするか迷っていた。

今まであのひとと話した記憶を辿っていた。

 

あのひとはスパークリングワインが好き。

あの人は空を見るのが好きで、星空がとても好き。

 

「やっぱりシャンパーニュにしよぅ!!」

 

シャンパーニュ地方ではシャンパーニュに溶け込む無数の泡を星に見立てて、星を飲むという表現をするという。

 

「星空を閉じ込めたシャンパーニュかぁ…

 綺麗なgoldがいいから、Blanc de Blanc がいいかなぁ…」

 

ワインセラーに仕舞っておいたシャンパーニュから、

TAITTINGER Comte de Champagne Blanc de Blancs  2000

を選んだ。

確かTaittinge好きだと言っていた。

 

揺らさないようにと注意しながら、大事に大事に運んだ。 

少し早歩きしながら、

(ちょっとの間だけだからストレスに感じないでね)

心の中でシャンパーニュに話しかける。

 

振動や温度を繊細なシャンパーニュは嫌がる。

大事に大事に運んだ。

 

待ち合わせのお店に到着。

あのひとの姿がある。

 

「お待たせしましたか?」

待ち合わせ時間通りに来たけれど、少し早く来るべきだったと後悔した。

 

後悔している私の視線の先に...

あのひとが持ち込んだワインがあった。

 

「嘘…

 ごめんなさい…

 私、同じもの持ってきちゃいました…」

 

彼も同じシャンパーニュを用意していた。

 しかもヴィンテージまで同じだった。

 

私も用意したシャンパーニュをテーブルに置いた。

 

「ヴィンテージも同じなんだね。」

あのひとが笑う。

 

「どうする?

 二本とも開けてしまう?

 これは僕が持ち帰ってもいいけど、もう一度君が一緒に飲むんだよ。」

 

今日だけではなく、二度目があるということ...?!

どうしよう?

でも戀へと発展は避けたい。

 

だって…

大事なお客様ですからね。 

 

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TAITTINGER Comte de Champagne Blanc de Blancs

シャンパーニュ地方のランスに本拠を構えるテタンジェ。

テタンジェのトップキュヴェがコント・ド・シャンパーニュです。

葡萄の出来が優れた年、コート・デ・ブランのグラン・クリュの畑で収穫されたシャルドネだけで造られる(ブラン・ド・ブラン)シャンパーニュです。