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「どうして連絡くれないの?」

「どうして電話に出てくれないの?」

「そんなに私が嫌なの?」

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「私の何が嫌なの?」

 

 

キチガイか....」

黒田はスマートフォンを見ながら吐き捨てるように言った。

 

どうして女はこうも連絡を欲しがる?

仕事やなんだかんだで、そう気遣ってられないし、かまってなんてやれない...

 

所謂、既読無視。

黒田は彼女に返信をしようとしなかった。

 

 

 

黒田は馴染みのワインバーの扉を開けた。

 

「いらっしゃいませ。」

「和織さん、接待帰りなんだ。

 ちょっとだけつまんで飲みたい。」

 

和織はカウンター越しから黒田に顔を近づけ言った。

「黒田さん、ものすごく顔が険しい...」

 

黒田は彼女のLINEの話をし始めた。

イライラする程、毎日毎日LINEが送られてくる。

そんなにお前は暇なのか?と鬱陶しいくらいだ。

黒田は溜め込んでいた言葉を一気に吐き出した。

 

黒田の話を静かに聴いた後、和織はやはり静かにこう言った。

「どうして男と女って、こう平行線になるんでしょ?

 そばにいないと、こうやって平行線で交われないって思うんです。」

 

「俺が悪いのか?」

黒田はイラつきながら言った。

 

「ねぇ、黒田さん。

 シェイクスピアの名言にこういう言葉があるんです。

 ”まったく想像力でいっぱいなのだ。狂人と、詩人と、恋をしている者は”

  今、彼女さんは黒田さんの沈黙が怖くて、いろんなこと考えちゃって苦しいと思い

 ますよ。

 それはもうびっくりするくらいに、いろんなことを想像しているんです。

 それはそれはネガティブな想像をね。

 

 黒田さんにはちっとも分からない暗い暗い闇の中に引き込まれてるんです。

 その怖さを殿方って解らないんですよね...

 女はなぜ解らないのかが解らない。

 だから平行線。

 そして今、黒田さんは自分を責め攻撃してくる彼女さんを、鬱陶しいと思って遠ざけ

 たくて仕方ない。

 それって逆効果です!!」

 

黒田はしばらく黙り込み、そしてやはりイラつきながら言った。

「俺はどうすればいい?」

 

和織は優しく微笑んだ後、少し怖い顔をしてこう言った。

「時間をつくることです。ちゃんと。

 彼女と向き合う時間。彼女が大切ならですけれど...

 だいたいね...

 忙しい忙しいって、お前はそんなに仕事が出来ない男なのか?

 タイトな中で時間つくることが出来るのが、仕事が出来るいい男ってもんでしょ?!

 って、私は思います。」

 

二人の話に聞き耳を立てていた他の客は、思わず和織の言葉に噴出した。

「和織ちゃん、ちょっと言い過ぎ。」

 

「和織の心の声ってことで...」

そう言って和織は口を尖らせた。

和織もまた、音信不通の被害者だった。

 

シェイクスピアに乾杯ということで、今夜はマディラにしましょ!!

 シェイクスピアの生きてた頃は、シェリーもマディラも一緒くたでザックと呼ばれて

 いたそうです。

 シェイクスピアはマディラが好きだったって。

 洗礼もマディラで行われたって読んだことがあります。」

 

そう和織は説明して、マディラワインとチーズを少し用意してくれた。

 

「ねぇ、黒田さん...

 想ってくれる人がいるなんて、幸せじゃないって私は思います。」

 

黒田は変らぬ険しい顔で黙ったままだった。

だがマディラワインを口にしながら思っていた。

ここを出たら電話してやるか...と。

 

 

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Madeira

 ポルトガルのマディラ諸島で造られる酒精強化ワイン。

ブランデーを加えてアルコール度数を高めています。

辛口から甘口まで幅広い味わいで個性豊かなワイン。

深い香りと芳醇な味わいのマディラワインを、シェイクスピアは「命と引き換えにしてもいい」といって愛していたと伝えられています。

文豪シェイクスピアに愛されたワインなんて、とっても素敵だって思うんです。