If we hadn't met …   

 

 

今朝の私はどうかしていた。

イライラがMAXで一人で深酒していた。

 

いつ店を出たのか、それからどうしたのか、何も覚えていなかった。

覚えていたのは誰かと会話をしていたこと。

誰かとは男性だった。

 

私が目覚めた時にはその男性はいなくて。

私はホテルのダブルベッドの上に一人で居た。

 

私は何も着てはいなかった。

何故なのかは容易に想像がついた。

 

そういえば男性は携帯の番号を交換しようと言っていた気がする。

アドレスを開くと見慣れない名前を見つけた。

「岳」

 

番号を交換する時、「名前は?」と訊かれたことを思い出した。

「あなたは?」と返すと、男性は「ガク」と答えた。

「山岳のガク?」という私の問いに、「そう」と答えた記憶があった。

 

どうしてこうなったか思い出せない。

男性の顔すら覚えていない。

 

自分のことが恥ずかしくて、何も思い出せないことが怖くて。

震える自分を抱きしめながら、早朝ホテルをチェックアウトし、急いで帰宅して着替え、そして出社した。

 

 

夜一人になるのが怖くて、親友の店に向かった。

扉を開け和織の顔を見てホッとして、そうしたら涙が零れた。

和織は小学校からの友達で、私の唯一無二の親友で、そんな彼女はひとりでwine barを営んでいて。

 

昨夜から朝に掛けての出来事を話すと、これからイラついて飲みたい時は私の処だけで飲むようにと叱られた。

 

少しだけだよと微笑んでcalvadosを注いでくれる。

「禁断の果実のお酒」

と彼女は意地悪な笑みを浮かべていた。

 私は渋い顔をしながらグラスを傾けた。

 

「ねぇ淳ちゃん。

 きっとね、その男性は淳ちゃんのタイプだったんじゃないかなぁ?

 いくら記憶が飛ぶ飲み方してても、タイプじゃない男と一緒にいないと思うょ。

 淳ちゃんの性格ならね。」

「そうかな?そうなのかなぁ?」

 

和織の言葉は慰めになった。

此処に来て打ち明けて良かったと思っていた。

この時はね… 

 

 

 

 

 

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