volatile girl-in love
「来週は逢える?」
「来週逢おうね。」
だけど...
彼からの具体的な日取りの連絡はない。
「今週は逢えないの?」
「ごめんね。バタバタと予定が入ってしまって、今週逢うのは無理なんだ...。」
それって言ってくれてもいいことなのでは?
彼はいつもそうだ。
人は言葉で嘘をつき、行動で嘘がつけない。
逢いたいなんて思っていないんじゃないかと不安になる。
「こんばんわ~」
ひとりぼっちの夜が嫌で、いつも行くワインバーのドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
いつものように優しい笑顔を向けてくれるソムリエール。
「彼が忙しくて逢えなくなっちゃったの...」
「彼氏さんはお仕事忙しいのね」
「なんだか私、重たぁい女みたい...
私が鬱陶しくて嫌なんだと思うの... 」
「そう彼が言ったの?」
「ううん...
そんな気がするだけ... 」
「どうしてそう思うんですか?」
問いに口ごもる私に、彼女は優しく微笑みながら言った。
「連絡なんていつだって出来るじゃない。
ちょっとした隙にメールだって出来るはず。
彼は私をそんなに好きじゃないんだ。
って感じに思ってます?」
涙ぐみ頷く私に彼女はこう続けた。
「女は大抵、どんな時も心の中に彼がいる。
男性と違って四六時中好きなひとを想っていられます。
何かをしながらでも、彼を想っていられる。
集中して物事にあたれないのではない。
好きになった瞬間に、心の中に彼という灯が燈る。
それを消したりしない。
それは消えたりしない。
仕事中は必要ないからと消さないし、女子会には必要ないからと消さない。
戀が終わるまで消さない灯。
戀が終わるまで消えない灯。
他者が違う考え方をすることは理解できても、
彼が違う考え方をするのが理解できない。
彼だって同じように四六時中想っているものだと考える。
でもそれは大きな勘違い。
仕事をしている時は、仕事しか出来ない。
彼女といる時は、彼女の相手で精一杯。
殿方はひとつのことしか考えられないものなんですよ。」
ソムリエールは話してくれながら、どこか悲しい顔をしているように見えた。
このひとも戀をしているんだな...
淋しい気持ちを抱えてるんだな...
私だけじゃないだなって思ったら、ちょっと気持ちが軽くなった。
「こんな日は甘いものに走りましょ♪」
可愛いハートのチョコレートがカウンターに置かれた。
「すごぉい、これ手作りですか?!」
ソムリエールは笑って言った。
「私、女子力検定一級なんです!!」
「女子力検定?!」
彼女は悪戯っぽく笑っていた。
この話は今度詳しく訊いてみよう。
女子力検定一級保持のソムリエールが選んでくれたワインは...
Costasera Amarone della Valpolicella Classico MASI
ダークな チョコっぽさを感じるワインとフルーツが隠れたチョコ達が、私の気持ちを甘く優しくしてくれていく。
「アマローネは”すごく苦い”って意味なんですよ。苦さがあるからこそ甘さも生きる...
戀も同じかもしれませんょ」
帰ったら電話しなくちゃ...
遅くまでお疲れ様って言ってあげよう...
彼の疲れちゃう毎日の、私はひと粒の甘さにならなくちゃ...
Costasera Amarone della Valpolicella Classico MASI
アマローネはイタリアのヴェネト州ヴァルポリチェッラ地域で造られるワインです。
丹念に粒選りされた葡萄を2~6ヶ月間陰干しし、樽熟成を2~6年、さらに1~3年瓶熟成され、長い時間を経て生まれてきます。
そしてマァジは1972年に生まれ、ヴァルポチェッラ地域を代表するワイナリーです。